幽霊の夜
誰かと生きているという感覚は一ミリも無かった。ソファに寝転んでカーテンが風で膨らんでは萎み、顔を撫でていく。それをじっと見ているだけで人生が終わってしまっても良かった。
話相手なんて要らなかった。友達も、恋人も、本の中のお話だった。
全てが遠くて全てがどうでも良かった。
絵が時々上手く描けない事だけが少し心に引っかかっていて、お腹に石が落ちた。
どうして、段々と独りでいる事に孤独を感じてしまうのだろう。
カーテンが揺れる。揺れる度、半液体の身体がボタボタと溢れ、形を成せなくなるから途方に暮れている。
長く美しく髪が伸びるまで終わりたくないと。
それを結い上げ、何処かの誰かがそれを登って、抱き合って。なんて寂しい夜だろうと。
いつの間にか体が無かった。それはとても恥ずかしく、まだ誰にも言っていないんだ。